自殺未遂、薬品中毒…。3枚の奇怪な写真とともに渡された睡眠薬中毒者の手記に、克明に描かれた陰惨な半生…。太宰治の自伝であり、遺書でもある作品。(解説?小林広一/鑑賞?太田治子)
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〈子供より親が大事、と思いたい——〉ちょっとし た冗談を言った母親と父親がすれ違った。妻も三人 の子も仕事もみんな大切に思っているのに、自ら夫 婦関係を壊してし まうジレンマを抱えた父親の姿を 描いた表題作「桜桃」。肌だけで生きている——何 よりも吹出物を嫌がる女性の、勝手ながらもどこか 愛らしい心理を綴った「皮膚と心」。そして、代表 作「ヴィヨンの妻」を含め、多岐にわたって人間の 弱くも優しい姿を追 求した全四篇を収録。
「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」青森の大地主の息子であり、廃人同様のモルヒネ中毒患者だった大庭葉蔵の手記を借りて、自己の生涯を壮絶な作品に昇華させた太宰文学の代表作品。「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」ほかに、家族の幸福を願いながら、自らの手で崩壊させる苦悩を描いた「桜桃」も収録。
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